日本 山梨
ブドウ品種:マスカット・ベーリー A90%、メルロー10%
2019年は山梨県全体にとても厳しいヴィンテージとなりました。契約農家のマスカット・ベーリー Aとメルローを除梗し醸し後プレス、 ステンレスタンクで発酵後、225Lの古樽で12ヶ月熟成しました。透明感がありライトなガーネット色、摘みたてのカシスと山ぶどう、 湿った土の香り、若々しい酸と穏やかなタンニン、軽やかですが旨味・エキスが感じられる上品な味わいです。
【 奥野田ワイナリー 】
甲府盆地の東側、山梨県甲州市塩山の旧奥野田地区。「奥野田ワイナリー」として、多くの人から親しまれるワイナリーがあります。そもそもここの出発点は、栽培農家がブドウを持ち寄ってワインを醸造する、1962年に設立された共同の醸造所でした。1989年にそれを現オー ナーの中村雅量さんが引き継いだのは、まだ26歳の時だったというから驚きです。品質の高いワイン造りは、まず納得のいくブドウ栽培から!という事で、ブドウ栽培には古い歴史を持つこの地の、契約農家の方々と納得のいくまで関りながら栽培し、現在まで続く農家さん達との信頼関係を作ってきました。1996年に自社畑を拓き、自らメルロー、カベルネ ソーヴィニヨン、シャ ルドネ、デラウェアを植え、今では自社ブドウと契約栽培のブドウの割合は、約半々のようですが、思い通りのワインが造れるようになるまでには10年ほどかかったそうです。現在は2haほどの、標高も斜度も地質も景観も違う4 ヶ所の畑を所有し、中村さんと奥さんの亜貴子さん、そして数名のスタッフで耕運機も化学 肥料も使用せずに、手作業によるナチュラルなブドウ栽培を行い、完熟したブドウから旨味とミネラル感あふれる、クリアーなワインを造っています。ワインは低価格のデイリーワインから、オーク樽発酵や熟成のスペシャルなワイン。濁った微発泡や甘口のロゼなど、個性あふれるラインナップは、どれも完熟したブドウのナチュラルな味わいを楽しむことが出来、しかも食事に寄りそうワインです。奥野田ワイナリーには、「奥野田ヴィンヤードクラブ」という会員制度があるのですが、これは奥野田ワイナリーのファンの皆さんに、集いと学びの場所を提供するものです。栽培だけでなく剪定や畑の1年を通しての畑仕事を体験し、座学の講座も併せて、ワインづくりを学ぶことを目的としています。 自らが畑に立って、中村さんご夫妻やスタッフの方々と一緒に作業をし、学ぶことで、ワイナリーに対しても、ワインに対しても、深い愛情が育っているように思います。また、ワイナリーの2階にはログハウスのテイスティングルームとショップがあり、予約すればワイナリー見学がどなたでも可能ですので、多くの人が集う奥野田ワイナリーの魅力に、皆さんも触れてみてください。
【 山梨ワインの魅力を伝えたい 】
日本ワインが今注目されています。2015年には、国内産ブドウ100%で造られる「日本ワイン」がカテゴリー化され、注目度が大きく増してきたことも実感できます。その中でも最もワイン造りの歴史と伝統がある勝沼をはじめとする山梨は、要注目! 注目すべきと言えるその大きな理由の一つは、「世代交代」です。今までにない感性を持った栽培家・醸造家が現れ、勝沼に代表される昔のイメージから大きく変わってきています。もともと中規模ワイナリーが多かった勝沼や塩山地区も、個人経営の小規模ワイナリーが 参入できる時代が来ました。そして、昔からの伝統的なワイナリーも代替わりすることで、名前はそのままで新たなる取り 組みが始まり、目覚ましい品質の向上と、過去の常識にとらわれない、今の時代にふさわしい個性と楽しさを備えたワインが次々に誕生しています。もう一つの理由は、「日本独自の栽培技術」。海外のワインに詳しい方は、買いブドウ(ネゴシアンもの)のワインよりも、自社ブドウ(ドメーヌもの)が理想であると、なんとなく思っていらっしゃる方が多いはず。しかしそれは、山梨をはじめとする日本ワインには、必ずしも当てはまりません。なぜかというと、日本のブドウ農家の多くは、美味しいブドウを作るための、卓越した栽培技術を持っているからです。 その中でも山梨のレベルは、非常に高いと言えます。当然のことながら、美味しいワインは美味しいブドウからしかできません。たとえ買いブドウであっても、ワイナリーとブドウ農家がワインの品質向上のために、互いに協力をしながら、それぞれの力を発揮している点に、今後も大きな可能性を感じます。もちろんこれは、山梨だけでなく全国の日本ワイン生産者に言えることです。ただ歴史と伝統にしがみついているだけではない、今の山梨ワインの素晴らしさを、是非皆様に飲んで感じていただきたいと思います。