マルセル・ラピエールが愛した『シャンパーニュ』
「マルセル・ラピエール」「フィリップ・パカレ」「Ch.ル・ピュイ」そして「ジャック・セロス」も愛飲するシャンパーニュ。南部コート・デ・バールでピノ・ノワールを主体に栽培。ブリュット・ナチュールの第一人者としても知られる。
ナチュラリストに愛される
「フィリップ・パカレ」との食事は「ドラピエ」で始まる。パリで人気のワインショップ、カーヴ・オジェが薦めるブリュット・ナチュールも「ドラピエ」。世界3大テノールのルチアーノ・パヴァロッティは喉に優しいと「ドラピエ」を歌う前に飲んだ。
『自然と芸術を愛する人々に愛されるシャンパーニュ。本物の純粋さを求める人達の為に造っている』
シャンパーニュの南端、オーヴ県ウルヴィル村。12世紀にシルタシアン派の僧侶によって築かれた地下セラーは現在も使われており、当時からこの地でワイン造りが行われていた事を示している(ドン・ペリニヨンより古い)。1808年より、この地でシャンパン造りを始めたドラピエは現当主「ミッシェル」で8代目。他の大手メゾンとは異なり、常に家族経営を続けている。
完全無農薬とノン・ドザージュを追及
所有する53haの畑では1989年から一切の農薬を使用しない有機栽培を実践。きっかけは長女シャルリーンの誕生だった。
『子供達の将来を考えた時に自然と今の自然な畑作りと葡萄栽培をやるべきと決断した』
しかし、ビオロジックへの移行は簡単ではなかった。合成肥料から堆肥への切り替え。農薬の不使用によって病や、害虫被害が増え収量は30%減った。土壌改善はゆっくりと進み、今では以前よりも個性をしっかり持ち、強い葡萄が収穫されている。
『葡萄畑の見栄えは悪くなった。でも、それが本来の姿。静と言うより、生命感に溢れる動の畑だ』
味わいに大きな影響を及ぼすドサージュ。「ドラピエ」ではワインに蔗糖を足し25年間熟成させたリキュールを品種毎に手作りしている。そして各キュヴェのセパージュと同じものを少量添加している。ブリュットは15g/lまで許されているが、カルト・ドールは6g/l。
『ドサージュの少なさはビオロジックで葡萄が強く自らの個性を表現できるようになったからできること。完熟した強い果実でないと6g程度の少ないドサージュでは骨格の無い寂しいワインになってしまう』
SO2無/ノン・ドザージュ/PN
『亜硫酸は香味を消す。少量であれば問題ないにせよ刺激物。純粋さを実現する為に添加量を少しずつ減らしている。現在、通常100mg/l程度使われるところ35mg/lまで減らしている』
収穫された葡萄は小分けにし、できる限り短時間でタンクに運ぶ。18度の完全な温度管理の下、野性酵母を使ってゆっくりと発酵を開始。酸素を遮断する為、圧搾機を発酵槽の真上に設置したグラヴィティシステムを採用。SO2無しでも果汁はバクテリアに侵されること無くワインへ変化する。2007年にはSO2完全無添加の「ブリュット・ナチュール・サン・スフル」をリリース。仏国内で大きな話題となった。15年の歳月を経て誕生したピノ・ノワール100%・ノン・ドザージュ・SO2無添加という一切を削ぎ落とした究極のシャンパーニュだ。
『SO2にアレルギーのあった母親は食事の時にタンクからSO2添加前のワインを抜き取って飲んでいた。ある時、遊びに来ていたソムリエがそれを飲んで感激してしまい、このキュヴェを造ることになった』