イタリア シチリア
ブドウ品種:ネロ・ダーヴォラ、フラッパート、グリッロ、ペリコーネ、インツォーリア
白ワインの爽やかさと赤ワインの果実感が絶妙なバランス
非常にジューシーでフレッシュな酸味と、たっぷりとした果実感が絶妙なバランス。
トゥットゥ=全てを意味します。ネロ・ダーヴォラと他の土着品種を混植した伝統的な畑。 9月中旬に収穫。除梗後、全ての品種をステンレスタンクで混醸。8日間のマセラシオン。温度管理なし。その後、ステンレスタンクで8ヶ月間熟成。
Il Mortellito / イル・モルテッリート
◭酷暑のノート
シチリア南東部、ノート。舗装された道路は少なく、不法投棄されたゴミが放火され、燃えているのが日常茶飯事。隣町のパッキーノは高品質トマトとアーモンドで有名ですが、大きな産業はなく、過疎化が進んでいます。1970 年代まではマルツァメーミ港はマグロの水揚げ量がイタリア最大で、加工場とヨーロッパ各国へ向けた出荷港として栄えていました。葡萄栽培にも適した土地だったので、これを利用して、ネロ・ダーヴォラの濃厚な安ワインが大量に生産され、ピエモンテやフランスに原料ワインとして出荷されていたのです。
30 年前までエトナより葡萄畑が多かったノート。葡萄にとって理想的なテロワールでした。黒色粘土質と砂質、白色石灰岩が混在し、モザイク状になる。下層は白亜石灰質があり、その下には海水を含む層があり、海と山のミネラルを得る事が出来ます。黒色粘土質は果実を与え、砂質は香とフレッシュさを与えます。白色石灰岩は塩味と植物的なタンニンとストラクチャーをワインに与えます。この地方のワインは重くなく、甘くなく、暑い地方の人々が好んで飲むクリスピーで軽快なものでした。
◭フランク・コーネリッセン、ラモレスカの協力
この地でスキューバ・ダイビングの講師として働きながら、親族の畑を借り、葡萄栽培農家として生計をたてていたダリオ・サレンティーノが 2014 年に設立したカンティーナがイル・モルテッリート。ダリオの親戚が自分達の畑をダリオに貸し、共に働きながらワイン造りを始めたのでした。
親戚を説得し、葡萄畑を借りあげ、更にラモレスカの畑も譲り受け 23ha まで増やしていきます。量産する為の仕立てから樹勢を抑えて収量を減らし品質を上げられるアルベレッロ仕立に順次変更。6,000 本まで植樹率を高めていきます。当初から、ダリオの葡萄は高品質で知られていて、ラモレスカのネロ・ダーヴォラの一部はダリオの葡萄が使われていたし、フランク・コーネリッセンのススカールには今でもイル・モルテッリートのモスカートが使われています。パッキーノの街道沿いの使われなくなったカンティーナを再建。古いセメントタンクは修復不可能だったので定温倉庫として活用。ステンレスタンクとポンプ 1 台を導入し、必要最低限の設備でワイン造りを開始します。
◭3 軒しか残っていないモスカート・ディ・ノート
この地域で伝統的に飲まれてきたモスカート・ディ・ノートの半甘口ワイン。現在、3 軒しか栽培していないモスカート・ディ・ノートの復活に注力しています。ジビッボとは遺伝子的に異なり、果皮が厚く、粒が小さい。よって収量が少なく生産効率が悪いのですが、独特のライチのような芳香と爽やかな甘味は他とは違う個性なのです。黒葡萄は伝統的にネロ・ダーヴォラとフラッパート。ダリオが拘るのは完熟。葡萄の種子まで完熟し、枝が緑から茶色く色付いた状態でないと品種の本来の個性をワインに移す事ができないと考えています。
一方で、暑いノートでは収穫タイミングを 3 日過ぎるだけでアルコール度数は 15%を超える程の糖度まで上がり、リンゴ酸は失われてしまいます。こうなると繊細な風味や品種個性はアルコールに覆い隠されてしまいます。暑いノートで完熟したネロ・ダーヴォラの果皮は柔らかいので細胞が壊れやすく、短いマセラシオンでも抽出が進みます。長過ぎるマセラシオンは荒いタンニンが出てしまい、酸化のリスクも高まるのです。